後遺障害慰謝料を多くもらうには「弁護士基準(裁判基準)」で交渉を
交通事故に遭って受傷し、さらに後遺障害が残ってしまった場合、加害者に対しては、入通院の治療費などに加え、「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」も請求できます。
今回の記事では、特に後遺障害慰謝料について、適正な支払いを受けるための注意点などを解説します。
このコラムの目次
1.交通事故で怪我をしたときに請求できる損害
交通事故に遭って怪我をしたとき、加害者に対しては、主として以下のような賠償を求めることができます。
(1) 治療費
事故で負った怪我の治療費です。入院や通院はもちろん、医師が認めた接骨院・整骨院での施術代なども含まれます。
また、診断書発行料や病院までの往復交通費も支払いの対象です。
(2) 入通院慰謝料
「入通院慰謝料」とは、怪我をして入通院することになり、苦しい思いをしたこと(精神的苦痛)に対する損害賠償のことです。
入通院期間や、怪我の程度によって定まります。
(3) 休業損害
交通事故で怪我を負い、それが原因で、仕事に行けなくなったり、仕事を休んだりすると、その分、収入が減ります。
このような減収分は、「休業損害」として請求可能です。
(4) 後遺障害が残った場合
後遺障害が残った場合、これらに加えて、後遺障害慰謝料と、後遺障害逸失利益を請求することができます。
後遺障害慰謝料
「後遺障害が残ったこと」によって生ずる精神的苦痛に対する損害賠償のことを「後遺障害慰謝料」と呼びます。
後遺障害逸失利益
後遺障害が残ってしまうと、事故前よりも働けなくなり、収入が減ってしまうことが多いです。このような減収分を補填するために請求できるのが、「後遺障害逸失利益」です。
[参考記事]
後遺障害による逸失利益を請求するには?職業別計算例を具体的に紹介
なお、後遺障害慰謝料や、後遺症が逸失利益は、後遺障害の程度(等級)に応じて、金額が変わります。
後遺障害の有無及び等級は、原則として、自賠責損害調査事務所で認定されます。
以下では、一般的な後遺障害認定の流れについてお話しします。
2.後遺障害認定手続
①「後遺障害診断書」を医師に書いてもらう
どのような症状が残存しているのかを詳細に記載するための、特殊な様式の診断書です。まずこれを医師に書いてもらいましょう。
②診断書等の提出
書いてもらった後遺障害診断書やその他必要書類一式を、加害者側の自賠責保険会社へ提出します。
自賠責保険会社は、請求書類に不備がないか確認のうえ、自賠責損害調査事務所へ送付します。
自賠責損害調査事務所では、各種調査のうえ、後遺障害の有無や程度(等級)を事実上決定します。
③認定結果が出る
自賠責保険会社から、認定結果の通知が届きます。
結果が出るまでは、書類を提出してから、早ければ1ヶ月ほどです。
ただし、複雑な事案の場合は数ヶ月かかることもあります。
④認定された等級を基に交渉を行う
認定された後遺障害等級をもとに、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を算出し、加害者側保険会社と示談交渉を進めます。
なお、自賠法の後遺障害としては認定されなかった(非該当)の場合や、認定はされたものの、想定よりも低い等級だった場合は、等級認定に対して異議申立することもできます。
[参考記事]
後遺障害の認定に異議申し立てをするために必要なこと
3.知っておきたい3つの慰謝料基準
後遺障害認定後、加害者側保険会社に対し、後遺障害慰謝料を請求する際に、注意しておきたいポイントがあります。
それは、慰謝料の算定基準は、1つではないということです。
具体的には、おおむね、以下の3つの基準が存在しています。
- 任意保険基準
- 自賠責基準
- 弁護士基準(裁判基準)
それぞれ解説していきましょう。
(1) 任意保険基準
任意保険会社が独自に決めている基準のことです。会社ごとに異なり、外部には公表していません。
交渉にあたって、被害者に代理人が就いていないケースでは、任意保険会社はこの基準を用いてくることが多いです。
後述の、弁護士基準(裁判基準)よりはかなり低額であることが多いです。
(2) 自賠責基準
加害者側の自賠責保険からの支払の際に用いられる基準のことです。
もともと、損害全部を補填することは想定しておらず、不足分は、加害者から支払われることを予定してます。
しかし、任意保険会社の中には、自賠責基準とあまり変わらないような低額の支払基準を定めているところもあるようです。
(3) 弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準(裁判基準)は、裁判になった場合に用いられる基準です。弁護士が交渉する際もこの基準を用います。
3種類の基準の中で、最も高額であり、適正な基準です。
示談交渉を弁護士に依頼すると、この弁護士基準(裁判基準)をもとに交渉を進めることができます。
4.弁護士基準(裁判基準)と自賠責基準の比較
具体的に、弁護士基準(裁判基準)と自賠責基準を比べてみましょう(なお、任意保険会社基準は具体的な金額が会社ごとに異なるため、ここでは用いません。)。
ここでは、後遺障害等級第1級、第7級、第14級に該当した場合の金額を、それぞれ比較してみます。
(1) 第1級
自賠責基準:1,100万円又は1,600万円
弁護士基準(裁判基準):2,800万円
第1級の場合、差額は1,700万円又は1,200万円。弁護士基準(裁判基準)は自賠責基準の約2.55または1.75倍です。
(2) 第7級
自賠責基準:409万円
弁護士基準(裁判基準):1,000万円
第7級では差額591万円。自賠責基準を約2.44倍した額が弁護士基準(裁判基準)となります。
(3) 第14級
自賠責基準:32万円
弁護士基準(裁判基準):110万円
むち打ちなどで認められることのある第14級において、自賠責基準と弁護士基準(裁判基準)の金額差は78万円。弁護士基準(裁判基準)の額は自賠責基準の額の約3.43倍にもなります。
このように、弁護士基準(裁判基準)を用いることで、適正な賠償を受けることができます。
そのためには、弁護士に依頼することが必要になります。
5.後遺障害慰謝料の示談交渉を弁護士に依頼するメリット
(1) 弁護士基準(裁判基準)での交渉が可能
弁護士介入前に任意保険会社が提示してくる後遺障害慰謝料は、任意保険会社の独自基準を用いて計算していますので、弁護士基準(裁判基準)には全く及ばない低い金額のことがほとんどです。
しかし、弁護士に依頼すると、先述の通り最も高い基準である「弁護士基準(裁判基準)」での交渉が可能になります。
慰謝料の額がぐっと増えるため、仮に弁護士費用特約を使えず、弁護士費用を自己負担しなければならない場合でも、依頼しなかった場合に比べて手元に残る金額は多くなります。これは被害者にとって非常に大きなメリットです。
[参考記事]
交通事故で後遺障害|弁護士に依頼すると慰謝料が増額する理由
(2) 後遺障害慰謝料以外の交渉も任せられる
今回の記事では後遺障害慰謝料について解説しましたが、弁護士は当然、後遺障害逸失利益その他の損害についても、適切な算定を行うことができます。
また、事故後早い段階でご依頼いただくと、わずらわしい加害者側保険会社との雑交渉も、弁護士が代理で行うことになります。
[参考記事]
交通事故の保険会社の対応・態度に不満!被害者にできる対処法
(3) 後遺障害等級認定のアドバイスも可能
後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を受け取るために必要な後遺障害認定手続の流れは先ほど記載しましたが、適正な等級認定のためには、遅くとも後遺障害認定手続の段階からは、弁護士に依頼すべきです。
適正な後遺障害が認定されるよう、追加検査の要否を検討したり、追加資料を提出することができます。
[参考記事]
より良い後遺障害診断書を入手する為のポイントとは?
6.後遺障害慰謝料の悩みは弁護士へご相談を
後遺障害慰謝料を含む交通事故関連の賠償金についてお困りの方は、早めに弁護士に相談することを強くおすすめします。
早めに相談や依頼を行うことで、適正な賠償金を受け取れる可能性が高まります。
船橋市、市川市、浦安市、習志野市、総武線・野田線沿線にお住まい、お勤めの方は、泉総合法律事務所船橋支店の弁護士にぜひ一度ご相談ください。
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