債務整理

自己破産した場合、破産管財人は財産隠しをどこまで調べる?

自己破産申立を行ない、免責許可決定を得ると、借金が原則として全て免除されますが、その代償として、ほとんどの財産が処分され、債権者への配当等に回されてしまうことになります。
そのため、ごく稀にですが、財産の処分を回避するために、財産を隠してしまおうとする方もいます。

しかし、「財産隠し」は、免責が原則として許されなくなる「免責不許可事由」の一つです。

免責とは、自己破産手続により借金を免除してもらうことを言います。つまり、財産を隠すと、自己破産をしても、免責が許可されず、結果、借金が無くならない恐れがあるのです。

しかも、最悪の場合には、財産隠しが犯罪として処罰され、刑事罰が科されることにもなりかねません。

このコラムでは、自己破産をするにあたって、絶対にしてはいけないことの一つ、「財産隠し」について説明します。

1.財産隠しがなぜ大きな問題となるのか

(1) 借金が免除されない、または復活する恐れ

自己破産手続の開始後、裁判所が、免責許可決定を出し、それが確定することで、破産者は、借金を免責されるとともに、様々な法律上の制約からも解放されます。

しかし、法律上の免責不許可事由があると、原則、免責が許されず、あとは裁判所が裁量で特別に免責を許可しなければ、借金は免除されないことになります。

財産隠しは、破産者が、自分の利益のために、本来であれば債権者に配当されるべき財産を減少させるものであり、そんな不正をしておきながら、免責の許可まで得ようとする訳ですから、債権者に不当に損失を与えると共に、裁判所や破産管財人の信頼も裏切る行為です。

そのため、財産隠しは、免責不許可事由の中でも、特に悪質なものとされ、裁量免責が下りない恐れが高く、また、免責後に財産隠しが発覚すれば、免責許可決定が後から取り消され、一旦は免責された借金が復活してしまう恐れがあります。

なお、財産隠しは、意図的にこれを行うのは勿論論外ですが、たとえ、主観的には、うっかり財産の申告漏れをしてしまった、という場合であっても、客観的には、財産隠しをしたことには変わりがありませんから、やはり免責不許可のリスクが生じますので、十分に注意して下さい。

(2) 罪に問われる恐れ

財産隠しは、「破産詐欺罪」という犯罪となる可能性もあります。
破産法265条1項によれば、以下のことが定められています。

破産法265条1項
手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(中略)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第1号 債務者の財産(中略)を隠匿し、又は損壊する行為

そして、有罪が確定すると、既に得ている免責許可決定も取り消されてしまい、借金が元通りになってしまいますし、資格制限(資格の新規取得、あるいは、既に取得した資格を利用した活動が制限される)も復活します。

2.破産管財人とは

破産管財人とは、裁判所が選任する、破産者に代わって破産者の財産の管理処分権を握り、破産者の財産を換価した上で、これを債権者へ平等に配当する者を言い、主に弁護士が就きます。

(1) 破産管財人の地位

破産管財人は、自己破産手続全般を統括する絶大な権限を持ちます。

例えば、破産管財人は、債権者への配当原資となる破産者の財産を出来る限り確保するため、破産者の財産状況を徹底的に調査し、回収できる財産があれば自ら回収することができます。

また、破産管財人は、場合によっては銀行通帳を破産者から預かることもあります。

未申告の銀行口座がある疑いがあれば、破産管財人は、自らの権限で、銀行に口座の有無の照会をすることもできます(その場合には、該当の銀行は、銀行口座を凍結してしまうこともあります)。

さらに、破産管財人は、不動産などの破産者の保有財産を売却し、また、過払い金の請求などもして、破産者が保有する財産を回収し、回収した財産を、債権者に配当します。

特に重要な破産管財人の権限が、否認権と呼ばれるものです。

(2) 破産管財人の否認権行使

債権者に対する配当の対象となる破産者の財産は、破産手続が開始した時点(破産開始決定の時点)で破産者が持っている財産に限られるが原則です。

しかし、破産者が、自己破産手続をする前に、自分の財産を他人に譲り渡す、例えば、不動産や保険の名義をタダで形だけ親族等に変更するなどの行為をしていた場合には、破産管財人は、その財産の処分行為を認めず、最初からなかったことにし、一旦他人に移った財産を、破産者の財産として取り戻すことが出来ます。

これを否認権の行使と呼びます。

財産隠しを図ったところで、管財人に隠し通すことはできず、もし発覚すれば、否認権の行使により回収されてしまうわけです。

3.財産隠しが発覚する具体例

では、預貯金や不動産など、具体的な財産や資産について、破産管財人はどこまで調べることが出来るのでしょうか。

そして、どのように財産隠しの事実を発見するのでしょうか。

(1) 預貯金

破産管財人は、前述のとおり、破産者の銀行の通帳の内容を確認でき、口座の有無を含めて、銀行に対して直接照会をすることも出来ます。したがって、口座を隠し通すことは不可能です。

たとえ、預貯金を引き出して、現金で隠したとしても、口座調査を行うことで、口座の入出金記録が残っているので、預貯金をいつ、いくら引き出したかも分かり、すぐに発覚してしまいます。

では、口座で管理するのではなく、現金をタンスに預金していた(いわゆるタンス預金)など、現金が手元にある場合、その現金を隠すことはできるのでしょうか。

破産管財人は、家に行って捜索差押えをして調べることはありません。

しかし、破産管財人は、金銭の入手先等を調べることは十分に可能ですので、例えば、不自然に大きな額のお金の移動があるにもかかわらず、その後に確認の取れた金額と釣り合いがとれていなければ、差額は現金で残っていると疑われますので、現金で手元に置いていたとしても、すぐに発覚してしまいます。

したがって、現金を隠し通すことも困難であると考えましょう。

(2) 保険の解約返戻金

管財人が調査すれば、給与明細や源泉徴収票、所得証明に基づいて、所得税からの生命保険等の控除がわかります。

また、銀行口座からの保険料の支払履歴や、保険会社からの封書のチェックによっても(破産開始決定後、破産手続が終了するまでの間、破産者宛の郵送物は、全て管財人の元に送られ、内容を全てチェックされます)、保険の有無、内容、保険会社や、名義を、いつ誰に変更したかもわかってしまいます。

(3) 不動産や自動車

不動産や自動車の名義を形式的に移転させて処分を逃れることも不可能です。

固定資産税や自動車税などの税金関連の証明書、不動産登記や車検証などの公の登録書類により、いつ誰にどのように名義変更されたかなどがわかります。

そして、管財人が否認権を行使することにより、そのような処分は取り消されてしまいます。

(4) 証券や株式

証券会社や信託銀行からの封書が届いたりすれば、破産管財人によりチェックされます。

そのため、株式や投資信託の残高や取引内容を隠し通すことは出来ません。

(5) 離婚に伴う財産分与

離婚に伴う財産分与による夫婦間の財産移転であっても、ケースによっては、財産隠しとみなされる恐れがあります。

原則、夫婦が共同して結婚中に築いてきた財産を分配するという正当な目的がある財産の移転行為である財産分与は、財産隠しにはなりません。

しかし、離婚届を提出して形だけ離婚を行い、財産分与を使って配偶者に財産を移転させて財産を隠そうとしても、不相当に過大な財産分与がなされたときには、財産隠しを目的とした偽装離婚であるとされる恐れがあります。

特に、自己破産の直前に離婚をしていた場合や、夫婦関係が破たんしていたといえる具体的な事実が不足している場合、離婚した筈なのに同居を続けている等、離婚の前後で生活に変化が見られない場合などには、すぐ発覚してしまうでしょう。

4.借金問題の解決は弁護士に相談を

繰り返しますが、財産隠しは、自己破産手続をするうえで非常に問題となる悪質な行為です。決して行ってはなりません。

大事な財産を処分されたくないという気持ちはわかりますが、財産隠しをすると、免責されない、下手をすると、犯罪者になってしまうという結末が待っています。

破産手続は、債権者に対して、免責という形で、痛みを一方的に押し付けるためのものではなく、免責で利益を得る破産者もまた、財産の処分や、自営業者や会社経営者の場合は事業の廃業という形で、痛みを引き受けるものであり、その公平さがあって初めて成り立つ手続であることを、ゆめゆめ忘れないようにして下さい。

泉総合法律事務所では、ご相談者様の財産状況も考慮したうえで、最適な借金問題の解決方法をご提案致します。

自己破産を検討しているものの、財産を処分されることに不安を抱いている方は、是非、お気軽にご連絡ください。

無料相談受付中! Tel: 0120-033-229 平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
0120-033-229
平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
メールでお問い合わせ