後遺障害の認定に異議申し立てをするために必要なこと
交通事故で後遺症を負ってしまって、後遺障害認定を申請しても、思うような認定を受けられないこともあります。
特に交通事故によるむち打ちやヘルニア等で、明確な所見がない場合、それを理由に後遺障害非該当になることも多いです。
そういう場合に、再度審査をやり直してもらう手続が「異議申立て」です。
異議申立てでは、一度審査を受けている以上、ほとんどの場合、その審査結果を覆すための新たな資料を提出することになります。
このコラムでは、後遺障害等級認定の異議申立てについて説明します。その際、書類集めのための重要なポイントについても解説します。
このコラムの目次
1.異議申し立ての流れ
異議申し立ての流れ自体は、いたって簡単です。以下の通り、書類準備を行い、提出し、結果を待つのみとなります。
(1) 書類準備
任意保険会社に提出することで後遺障害認定を行った場合は、任意保険会社から異議申立書をもらいます。これに必要事項を記入します。
申立の趣旨には、異議の内容を記載します。ご自身が考える障害について適切に判断されていないことなどを記載することになるでしょう。
書き方は、自筆でも構いませんしPCで作成しても大丈夫です。
申立書以外にも、認定結果を覆せる根拠がある場合には、資料を添付しましょう。レントゲン写真、CT画像、他の医師による意見書、検査結果、カルテ等です。
添付資料があれば、覆す根拠を裏付けられます。
(2) 自賠責保険会社に異議申し立てを提出
申立書や添付資料が準備できたら、自賠責保険会社に異議申し立てを行います。必要書類を揃えて郵送します。
任意保険会社主導の事前認定で後遺障害認定を行った場合は、任意保険会社宛てに送ることが多いでしょう。
ご自身で被害者請求を行った場合は、直接自賠責保険会社に送付します。
(3) 結果待ち・審査期間
提出が終われば、審査結果を待つことになります。この間に特にできることはありません。申請から結果までは2ヶ月〜半年程度かかるでしょう。
結果が非該当、希望等級ではない場合には、また申し立てを行うことができます。何度でも申し立てを行うことができますが、10年で時効となります。
異議申し立ての手続きを行ってから結果が出るまでの日数は、遅くて2年までかかることもあります。なので、一概に「いつ審査が終わる」と言い切ることはできません。ただ、異議申し立ての審査期間の方が、初回の審査期間よりも日数は長くなることが多いです。
その理由としては、初回申請の審査機関と異議申し立ての審査機関が異なり、異議申し立ての審査機関の方が、高度で専門的な知見から慎重な判断が行われることが考えられます。
2.後遺障害認定を覆すための書類
後遺障害認定結果が覆る確率は、10パーセント以下です。
一度審査をしている以上、その後に認定結果を覆すことは非常に難しいといえます。
もっとも、以下のような書類があれば、認定結果が覆る確率が高くなるでしょう。
(1) 被害者の方の陳述書
後遺症についてわざわざ認定制度を設けて損害賠償を限定しているのは、日常的に問題がさほど生じていない後遺症については、損害賠償の対象から外すためでもあります。
逆に言えば、被害者の方が後遺症により仕事や家事などの日常生活に具体的な問題が生じていることを審査機関に対して説得できれば、後遺障害の認定に有利に働きます。
ですので、被害者の方の状況を記載した陳述書を提出することがおすすめです。
(2) 医学的な知見が記載された未提出の資料
異議申立ては、すでに提出されているカルテや検査結果、診断書などの後遺症に関する医療記録・資料に基づいてなされた審査結果を覆す手続です。
ですから、異議申立て手続では、ほとんどの場合、初回の認定申請の際に提出していなかった新たな資料を提出する必要があります。
具体的には、以下のようなものがあげられるでしょう。
- 医療照会の回答書
- 意見書
- 新たな後遺障害診断書
- 未提出のカルテや検査結果
3.必要書類を集めるために重要なこと
異議申立てで必要となる書類、特に医学的な知見が記載された資料を収集するには、医師や弁護士など、専門家との連携が重要になります。
(1) 医師との良好な関係を築いておく
異議申立ての必要書類である医学的な知見が記載された資料は、結局のところ、医師が作成した様々な書類です。
ですから、異議申立てを成功させられるような多くの書類、充実した書類を手に入れるには、事故直後から医師としっかりとしたコミュニケーションをとり、良好な関係を作っておくことが大切です。
後遺障害等級認定手続において重視される検査と、通常の治療行為において必要とされる検査がずれることも珍しくありません。
この場合は、医師が「そのような検査は、医学上、あなたの治療のためには不要だ」と言って、検査をすることに難色を示しがちです。
それを乗り越えて検査をしてもらうためには、常日頃から、多忙な医師の状況を理解して無理難題を押し付けないように注意しつつ、指示にできる限り従い、一方で、後遺障害等級認定手続でどのような資料が必要なのかをしっかりと伝えるなど、確かな人間関係の土台の上で情報を共有することが必要なのです。
(2) 早くから弁護士に依頼する
後遺障害等級の認定は、医学的な知見が重視されるとはいえ、法律的な判断が必要とされる手続です。
法律の専門家である弁護士に依頼することで、どのようが医学的な知見が必要なのかの助言を受けることができます。
必要な検査についての医学と法的手続の間のズレを埋め、医師を説得するためにも、弁護士からの説得は重要でしょう。
後遺障害の認定条件を証明する資料を充実させるには、事故直後から、適切な行動をとることが重要です。
依頼するのは早い時期であることに越したことはありません。
被害者の方は、事故直後は混乱してしまっているでしょう。もともと専門的知識を持っていないところに、精神的に大きな負担を負っていては、適切な行動をとることは非常に難しいのです。
ですから、早くから弁護士に依頼して、どのようなことをすればよいのかの助言を受けましょう。
また、弁護士に依頼すれば、加害者側の任意保険会社との連絡も代わってもらえますから、その負担も少なくなり、治療や医師との関係に力を注ぐことができます。
4.後遺障害等級認定への異議申し立ては弁護士へ
後遺障害等級の認定を受けなければ、後遺症についての損害賠償請求をすることはできません。また、認定等級により、請求できる金額は大きく変わります。
後遺障害等級が非該当になったり、納得のいく認定結果にならなかったりした場合は、異議申し立てにおいて初回審査で提出していなかった新しい判断材料をかき集め、認定理由に対して有効に反論できるように全力を尽くすべきです。
弁護士に依頼すれば、法律の知識を持っているわけではない医師に対して、適切な書類の作成などを要求しやすくなります。
なにより、集められた資料に記載された医学的な知見を適切に組み合わせて、法律上の反論を効果的にする能力を持っているのは弁護士だけです。
泉総合法律事務所では、これまで多数の交通事故の被害者の方を異議申立て手続きでお手伝いしてまいりました。
過去に認定結果が非該当から12級になった事例や、14級から12級に上がった事例もいます。皆様のご相談を心よりお待ちしております。
以下は、泉総合法律事務所における異議申し立ての解決事例となります。
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・後遺障害14級の神経症状から、異議申立にて12級の可動域制限が認められた事例
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