過払い金返還請求ができない場合・金額が減る場合
過払い金は、お金を業者に支払っていた人全員が必ずもらえるというものではありません。
そもそも、全く過払い金が発生していないものや、発生したとしても請求できなくなってしまう場合があります。
このコラムでは、過払い金を請求できない場合について、まとめます。
1.絶対にまったくもらえない場合
(1)初めて借金を返済したときが2010年以降だった場合
過払い金は、グレーゾーン金利(※)にもとづいて利息を払いすぎていたために、支払う必要がないのに支払ってしまったお金を取り戻すものです。そのため、グレーゾーン金利がなくなって以降に借金を返済し始めた人は、そもそも利息を払いすぎていませんので、過払い金がありません。
2010年には、法律上、グレーゾーン金利が完全に解消されました。ですから、2010年以降に借金の返済を始めた場合には、過払い金はありません。
※グレーゾーン金利とは、利息を規制する二つの法律である、利息制限法と出資法の間で、上限利率が異なっていたために、違法かどうかがあいまいなっていた金利のことです。
2006年、最高裁が、グレーゾーン金利は、利息制限法の上限利率を超えているため、違法だと判断しました。
(2)グレーゾーン金利を採用していない会社に返済していた場合
グレーゾーン金利は、全ての会社が用いていたわけではありません。
まず、銀行や信用金庫などは、グレーゾーン金利での貸し出しを行っていません。
また、貸金業者やクレジットカード会社でも、モビットやアットローンなどのように、グレーゾーン金利による利息を取っていない業者もいました。
このようなところに借金を返済していた人は、2005年以前など、業界にグレーゾーン金利が蔓延していた時代に借金を返済していても、過払い金はありません。
(3)クレジットカードのショッピング枠でのリボルビング払いの場合
過払い金の返還請求ができるのは、相手に対して「借金の利息」を支払っていた場合です。「払いすぎたお金を返せ」といえる理由は、「借金の利息」を規制する法律である利息制限法に、利息の利率が違反していたからです。
さて、クレジットカードのショッピング枠の利用は、借金ではありません。物やサービスなど、店舗での代金を立て替え払いしてもらっているのです。
ですから、ショッピング枠のリボルビング払いで、利息のように支払っている手数料は、法律上は、「借金の利息」ではありません。
そのため、手数料が利息制限法の上限利率を超えていても、クレジットカードのショッピング枠の返済について、過払い金は請求できません。
なお、キャッシング枠は普通の借金ですので、他の条件をクリアしていれば、クレジットカード会社に過払い金を請求できる可能性はあります。
(4)取引を終えてから10年を超える期間が経過している場合
過払い金を返還するよう要求する権利があったとしても、請求できるようになってから一定の時間が経った場合に請求できなくしてしまう「消滅時効制度」の壁が立ちはだかります。
過払い金返還請求権は、取引を終えてから10年が経過すると、消滅時効により請求できなくなります。
取引を終えるとは、借金を完済することです。借金を完済したのが10年より前ならば、利息を支払いすぎていたとしても、過払い金返還請求は、もはやできないのです。
逆に言えば、最初に借金をしたのがどんなに昔であっても、9年前に完済したのなら、問題はありません。
ただし、非常に昔から借金をしていた場合は、すぐ後に説明する「取引の分断」に注意してください。
2.まったくもらえない可能性がある場合
(1)初めて借金の返済したときが2006年以降だった場合
2006年にグレーゾーン金利が違法だと最高裁が判断して以降、貸金業者は、法律上、グレーゾーン金利がなくなる前に、自主的に利息を下げました。
早い業者だと、たとえば、ライフカードは2006年11月にはグレーゾーン金利で利息を取ることを止めています。
そして、2007年には多くの業者が次々と利息を下げていきました。
法律上の改正間際まで粘った業者もわずかにいますが、上記のような事情から、2006年以降、特に2008年以降に借金の返済をしはじめた方は、過払い金が全くない可能性があります。
(2)グレーゾーン金利による借金を完済した後に、合法な金利で取引を再開した場合
具体的には2007年前後に借金をいったん完済し、業者が利息を下げた後にまた借金をした場合です。
2019年現在、2007年はもう10年より前です。ですから、2007年にいったん完済した時点で、取引が終わっていたとされてしまうと、消滅時効により、完済前の借金について発生した過払い金は請求できないことになってしまいます。
完済後の借金には、過払い金はありませんから、まったく過払い金が請求できません。しかし、貸金業者との借金は、普通、「上限50万円」といった一定の枠内で、何度も借りては返してということを繰り返すものです。
そのため、いったん完済をして、「取引の空白期間」が出来てしまったとしても、具体的な事情次第では、取引が「分断」されていない、「一連」のものとされる可能性があります。
一連の取引だとされれば、最終的な借金の完済が10年以内なら、取引の空白期間より前の過払い金は、時効にかかりません。
分断されるかどうかの最大のポイントは、完済してからまた借金するまでの期間です。目安としては「取引の空白期間」が1年を超えるかどうかです。とはいえ、それだけで決まるわけでもありません。
たとえば、
- 取引の空白期間の前後で違う契約書やカードにしたか
- 契約内容の違いがあるか、どれくらい違っているか
など、とても具体的な事実も加味されます。
(3)貸金業者と弁護士を介さず和解をしていた場合
借金の返済が遅れた時に、貸金業者と和解をしていた場合、借金減額などと引き換えに、過払い金を返還請求しないと約束させられてしまっている場合があります。
貸金業者は、借主が弁護士に依頼していなければ、そのような罠にかけることがよくあるのです。
一応、裁判所が、和解で過払い金返還請求できなくなったわけではないと認めてくれる場合が、ないわけではありません。
3.手に入れられる金額が一気に減る場合
(1)グレーゾーン金利が続いている間に、取引が分断されてしまった場合
グレーゾーン金利が普通だった時代に、取引の空白期間が存在し、そのために取引が分断されているとなった場合、その後の取引が時効にかかっていなくとも、分断前の取引は時効にかかってしまいます。
そのため、過払い金のかなりの部分が、返還されない恐れがあります。
(2)借金をしていた貸金業者が倒産した場合
貸金業者が倒産してしまうと、過払い金の返還請求権があるとみとめられても、その数%しか返還されないことがほとんどです。
倒産前には、しばしば、貸金業者が他の貸金業者などに借金の返還請求権を譲り渡す(「債権譲渡」といいます)ことがあります。
債権を譲渡された業者には、原則として、債権譲渡をした業者への過払い金を請求できません。
4.専門知識や経験が必要な過払い金請求は弁護士へ
過払い金返還請求権は、貸金業者が違法に取り立ててあげた利益を取り戻す正当な権利です。
しかし、法律には、どうしても様々な紛らわしいルールがあります。そのために、専門的な法律知識を持たない方からすると、普通に過払い金が返ってくると思っていたのに、全く戻ってこなかったということも、十分あり得るのです。
このコラムをお読みいただいた皆様には、たとえば、つい最近の借金や、クレジットカードのショッピング枠の支払いには、過払い金が全く生じないということが分かったと思います。
しかし、取引の空白期間がある場合や、和解契約をしてしまった場合などには、返還請求が空振りに終わる可能性があることはわかっても、実際に、あなたが請求をしたい貸金業者から過払い金を取り戻せるのか、具体的な判断はできません。
それは、まさしく弁護士の仕事なのです。
泉総合法律事務所は、これまで多数の過払い金返還請求について、任意交渉及び裁判双方の豊富な取扱い経験がございます。相談は無料、費用は返還額の20%で、裁判になっても同額です。是非、お気軽にご相談ください。
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