自己破産の手続中できないこと、制限されること
自己破産をご検討されているご相談者様から、「自己破産をすると海外旅行や引っ越しができないんですか?」、「自己破産手続中は携帯電話の利用が制限されるってほんとですか?」といったご質問をいただくことがあります。
たしかに自己破産手続中は、様々な制限や禁止事項がありますので、事前にきちんと確認しておく必要があります。
そこで今回は、自己破産手続中の制限や禁止事項について解説します。
このコラムの目次
1.自己破産手続中の制限
自己破産をしても、日常生活にはあまり支障がありません。
現金は99万円までは処分の対象とされず、また、家具や衣服等の生活必需品も処分の対象とされていません。
そのため、生活に必要な買い物は行うことができますし、自己破産をした人と結婚することもできるなど、今までと変わらない生活を送ることはできます。
もっとも、自己破産の手続中においては、破産者はいくつかの自由を制限されます。
破産手続きで処分対象となる財産の基準は20万円と考えられています。一般に携帯電話の機種代が20万円を超えることはないので、処分対象となることはないでしょう。
また、自己破産後に携帯電話の利用料金を支払い続けても問題ありません。しかし、滞納をしている場合は問題になる可能性があるので、詳しくは弁護士にご相談ください。
(1) 資格制限
自己破産を申し立て、破産手続開始決定が出されると、一定の資格を取得できなくなったり、一定の職業に就けなくなったりします。これを「資格制限」と言います。
例えば、弁護士や税理士など、いわゆる「士業」と呼ばれる職業で資格制限が多いことが分かります。
そして、資格制限の結果、収入が制限されることになります。
なお、資格制限は一生続くものではありません。資格が制限されるのは、あくまで破産者が「復権」するまでの間です。
「復権」とは、法的に破産者から一般人の状態に戻ることで、免責許可決定が確定することにより、自動的に復権します。
また、就職先に原則として自己破産がバレることはありませんし、就職活動においても企業が信用情報を調査することはできません(そのため、転職先にも原則としてバレることはありません)。
(2) 引っ越し・旅行の制限
自己破産をすると、一定の期間、引っ越しや旅行につき制限を受けることになります。
具体的には、破産手続開始決定時に裁判所に申告した住所から引っ越しをしたり、長期旅行に出かけたりすることが禁止されます。
引っ越しや長期旅行につき制限が設けられているのは、破産者が逃亡したり、財産を隠匿したりすることを防ぐことが目的です。
また、破産者が勝手に引っ越したりして居場所が分からなくなってしまうと、裁判所や破産管財人が調査をする際に連絡がつかず困ってしまいます。
そのため、引っ越しや長期旅行をする際には、事前に裁判所の許可を得る必要があるとされているのです。
このように、破産手続中は居住場所の制限を受けることになりますが、自由に引っ越しや長期旅行ができないということで、引っ越しや長期旅行自体が禁止されているわけではありませんし、破産手続が終了すれば制限は解除されます。
もっとも、これらの制限がされるのは、自己破産の手続でも、管財事件になった場合のみです。同時廃止の場合には、居住場所の制限はありませんから、自由に引っ越しや長期旅行が可能です。
ただし、同時廃止の場合も、免責許可決定が確定する前に引っ越しをした場合には、裁判所に新住所を報告する必要はあります。
(3) 借り入れ
自己破産手続をすると、いわゆるブラックリストに載ります。ブラックリストに載れば、新たな借り入れをすることができなくなります。
また、新たにクレジットカードを作成することもできません。
さらに、ローンの審査にも落ちてしまいますので、ローンを組むことができない以上、自己破産後に車や住宅を購入することも難しいでしょう。
このブラックリスト状態は、自己破産後もおよそ10年続きます。
なお、クレジットカードのショッピング枠の現金化も、借入れ同様債務を増やす行為ですので許されません。
機種変更の機種代を一括払いすることが可能であれば、問題ありません。しかし、機種代を分割払いで購入することは難しいです。
分割払いは、立て替え払いにあたります。よって、信販会社は審査を行うので、ブラックリスト状態で通ることは難しいでしょう。
2.自己破産手続中にしてはいけないこと
自己破産手続中に破産者が受ける制限は上で説明したとおりですが、他に自己破産手続中に禁止される行為として以下のような行為があります。
(1) 偏頗弁済
自己破産手続中は、新たな借り入れはもちろん、返済もしてはいけません。
自己破産をする人の中には、自己破産をすると迷惑をかけるからとして、親戚や友人などからの借金だけは返してしまおうと考えてしまう人もいます。
ですが、このように一部の債権者だけに返済をする行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、問題となります。
自己破産手続においては債権者を平等に扱う原則があり、それに反することになるからです。
偏頗弁済は、免責不許可事由にあたりますから、免責を受けられなくなる可能性があります。それだけでなく、偏頗弁済は、破産管財人の否認権行使の対象となり、否認権が行使されれば、偏頗弁済を受けた債権者は、結局返済を受けた分を破産管財人に返さなければならなくなってしまいます。
ですから、返済した債権者にかえって迷惑をかけることになりかねません。
なお、自己破産手続中だけでなく、自己破産前の偏頗弁済も問題となりえます。
(2) 浪費・ギャンブル等
借金の原因が浪費やギャンブルにある場合は免責不許可事由にあたることは、ご存知の方も多いと思います。
ですから、当然、自己破産手続中に浪費やギャンブルなどをすることは許されません。
(3) 財産隠し
自己破産をすると、破産者は基本的に全ての財産を失うことになります。
そのため、中には、少しでも手元に財産を残そうとして、裁判所に申告すべき財産を申告しなかったり、少なく申告したり、他人名義に変えてしまったりと、いわゆる財産隠しをする人も出てきます。
ですが、そのような財産隠しをすると、免責不許可になる可能性が高くなるだけでなく、最悪の場合、詐欺破産罪として刑事責任を問われかねませんから、絶対にやってはいけません。
財産隠しについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
[参考記事]
自己破産の「財産隠し」はバレてしまうの?
3.自己破産は弁護士に相談を
今回は、自己破産手続中の制限や禁止事項について解説しました。
自己破産をはじめとする債務整理の手続においては、守らなければならないことや注意事項がいろいろあり、心配に思われることもあるかもしれませんが、弁護士にご依頼いただいた場合には、そのあたりも丁寧にご説明いたします。
借金問題でお悩みがありましたら、まずは一度弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所では債務整理の法律相談は無料でお受けしております。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談いただければと思います。
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